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SLII®導入企業事例

武田薬品工業様におけるSLII(R)導入の背景と今後の課題

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ブランチャード ・ジャパン主催のカンファレンス「これからの時代に求められるリーダーシップとは」にて、武田薬品工業株式会社のグローバルHR人材開発・組織開発(日本)タレントディベロップメント・リードの上場啓司様に、リーダー育成事例についてご講演いただきました。
以下はその要約です。

1.グローバル企業への脱皮

武田薬品工業株式会社は1781年に「薬種商」としてスタートし、やがて「近代的製薬企業」、そして「国際企業」へと発展してきました。その後、2008年のミレニアム社買収、2011年のナイコメッド社の買収を経て、本格的に「グローバル企業」へと変容しつつあります。

あくまでも日本を中心として海外に拠点を設け運営していた「国際企業」の時代とは異なり、「グローバル企業」化のステージに入った当社では、一部の本社機能の海外移転や、国を越えた機能別組織の設置などが進んでいます。その結果、マネジメントチーム(経営陣)の多国籍化も進み、現在のマネジメントチームは、代表取締役社長CEOのクリストフ・ウェバー氏を始めとして、14名中11名は日本人以外のメンバーです。
このような変化はこの5年ほどで急激に進みました。したがって、新たなビジネスモデルや組織を牽引するリーダー人材の供給が間に合わず、外部人材の採用に頼らざるを得ない状況となりました。そこで、今後は社内からリーダー人材を輩出するべく、グローバルなリーダーシップ育成プログラムを再構築し、ポテンシャルのある人材の選抜と育成を加速させています。

2.共通言語確立のためにSLII®を導入

「グローバル企業」化をすすめる当社におけるもう1つの課題は、国を超えた機能別組織となった結果、マルチ・カルチャー環境下で組織生産性を高めるマネジメント能力がミドルマネジャーに必要になるということでした。そのためには、マネジメントに関するグローバルな共通言語が不可欠であり、グローバル共通のマネジャー向け学習ポータルサイトの公開や、内容の同じトレーニングプログラムのローカル展開を開始しました。
SLII®はその一つです。元々は、米国のビジネスユニットが先行して取り入れており、「大変よいプログラムだ」という評価を受け、2年前から日本でも展開することになりました。

SLII®導入に関して私たちにとってありがたかったのは、複数の展開方法が可能だということです。従前の研修の多くは、人事部が主導し、各部門に人数を割り当て、参加者を募るというやり方でした。しかし、今の人事部は、各部門のニーズに対応するというビジネスパートナーの役割を担っています。そこで、SLII®についても、部門のニーズに合わせて、3つの展開方法を使い分けています。
1つ目はブランチャード・ジャパン主催の公開講座に送り込むという方法です。これは、社内の事務局の手間がかからない、そして、参加者は他社の参加者と交流もできるというメリットがあります。ただ、開催地が東京・大阪に限られているほか、参加費が高いということもあり、対象人数が少ないときに有効な方法です。
2つ目は、社内で研修を開催し、ブランチャード・ジャパンから講師を派遣してもらうというやり方です。研修のクオリティは公開講座と同じまま、一人当たりの費用を下げることができます。しかし、対象者が数百名、数千名といる場合は、やはり費用面や講師の方のスケジュール調整の観点から、難しい面もあります。
このように対象人数が多いときに有効なのが、社内講師による実施です。ブランチャード・ジャパンは認定講師養成コースも提供しており、社内講師を育成することが可能です。社内講師による展開は、費用の低減だけでなく、SLII®の知見を社内に蓄積することにも寄与します。

当社ではSLII®を導入してまだ間もないので、効果を測定するには至っていませんが、SLII®受講後のアンケートでは、満足度も有益度も100%という結果でした。その理由として、シンプルでわかりやすい、記憶に残るので実践に移しやすいといったことが挙げられていました。

3.課題と今後の展望

実はSLII®導入のあとに、SLII®が益々必要になりそうな事態が起きています。それはノーレイティング(No Rating)の一部の部門への導入です。米国企業を中心に起きていたノーレイティングの動きは、どこか対岸の火事のような感覚がありましたが、当社のアメリカのビジネスユニットが導入の検討を始めたのです。期末のレイティングに集中しがちな上司と部下の対話を、レイティングをなくすことで是正し、期中の対話を促すことで、本来行われるべきパフォーマンスマネジメントを実現し、結果として従業員のエンゲージメントレベルを上げたい、というのが理由でした。
そこで、まずアメリカのビジネスユニットがパイロット的に導入し、その後、全世界のR&Dやコーポレート部門のマネジャー以上に適用することになりました。
ノーレイティング制度は、上司と部下が日ごろきちんとコミュニケーションしている前提があって成り立つものです。期末のA、Bといった記号によるレイティングがなくなるとはいえ、昇給、昇格では何らかの評価が必要となります。したがって、日常のコミュニケーションがないノーレイティング制度は、評価のブラックボックス化、不透明化を意味します。
そこで当社では、上司と部下の間の対話の頻度と質を高めるため、「クオリティ・カンバセーション(quality conversation)」と称するパフォーマンスマネジメントの基本概念をグローバルに展開することにしました。現在、各部門、各地域でクオリティ・カンバセーションの概念浸透のためのワークショップを展開しています。もっとも、上司と部下の間の質の高い会話は、期末のレイティングの有無に関わらず重要であることから、レイティングをしている部門でもワークショップを行っています。
クオリティ・カンバセーションは、「信頼関係を築き成長や成果に繋がる質の高い対話」と定義され、次の4つで構成されています。

  1. 目標と優先順位
  2. キャリア・育成
  3. 日常的なフィードバック
  4. トータルリワード

このワークショップの目的は、クオリティ・カンバセーションがなぜ必要なのか(Why)、何の対話をすべきなのか(What)を理解してもらうことです。どうやって行っていくのか(How)には、このワークショップでは触れていません。したがって、今後はそのHowの理解を進めるステップに入っていく必要があります。そこで有効なのがSLII®だと考えています。SLII®のトレーニングにより、部下の開発段階に応じた対話のフレーム(型)を習得することができます。
一方でSLII®は、効果的にフィードバックやコーチングを行うための具体的スキルを習得するトレーニングではありません。現場から声を拾ってみると、コーチングやフィードバックのことを誤解していたり、あるいは実践で困ったりしている人が多いことがわかりました。そこで、今後はコーチングやフィードバックのスキルを強化するためのトレーニングも必要だと考えており、検討をすすめています。

上場様、リーダー育成施策の背景から現状、今後の課題に至るまで、大変貴重なお話をどうもありがとうございました。

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