日本電産が取り組む働き方改革とSLII®

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「ハードワークで戦う」からの転換

日本電産は、現会長の永守重信ほか3名が1973年にモータ・メーカーとして創業した会社です。創業して暫くは、立派な社屋も資金もなく苦労の連続であった中、そのような創業間もない弱小メーカーが大企業に伍してどう戦うか悩んだ末、「『時間だけは平等にある』のだから、1日16時間つまり競合の倍の時間働いて勝ち残ろう」と考えたと聞いています。その後、ハードワークは日本電産の代名詞となりました。
企業理念についても、例えば「三大精神」として次の標語がありますが、
1.情熱、熱意、執念
2.知的ハードワーキング
3.すぐやる、必ずやる、出来るまでやる
やはり、ハードワークを想起させるものになっています。
しかし、売上が1兆円を超えた今(※2017年の売上は1兆4880億円)、更に2兆円、5兆円、10兆円と伸ばしていくには、ハードワークから高効率労働への転換が不可欠との認識を持つに至りました。世の中の流れもありますが、日本電産がオーガニック・グロース(有機的成長)とM&Aの二本柱で成長してきた中、M&Aでグループ入りした海外の企業には、従業員の残業は少なく、休みも充分にとっているのに業績の良い会社もあり、日本人の生産性の低さが目立つといった理由もあります。
このような事情から、生産性を2倍にして、結果として残業をゼロにするという取組みが始まりました。

働き方改革の始動

2015年に、手始めに、「社内会議効率化・重複会議の削減」に取り組みました。具体的には、会議のルールなどを定め、ポスターを会議室に貼るなどして、会議の効率化に務めました。
2016年には、より本格的に働き方改革に取組むべく、中堅層を中心に約200名にヒアリングを行い、生産性倍増を阻害するものは何かにつき様々な意見を集めました。結果は、7つのテーマに集約され、そのテーマごとに検討のための分科会を設置しました。

1.英語能力向上
2.マネジメント力向上
3.人材育成
4.人事制度
5.システム、IT
6.効率向上
7.業務革新

分科会の活動報告は役員トップ層に対して月次で行われます。毎月、進捗を報告するためには、各分科会が活発に動かなければならず、分科会の活性は上がりました。8か月間の活動の末、施策が出揃い、活動を分科会から現場に移行したのが2017年の夏頃となります。一方、並行して、2017年に女性活躍推進室を設置したり、在宅勤務・時差勤務・時間単位年次有給の制度の導入も行いました。

「残業ゼロ」は目的ではなく手段

日本電産の働き方改革の目的は生産性倍増であり、「残業ゼロ」が目的ではありません。ただ、「残業ゼロ」あるいは「残業削減」を掲げるのは、一人ひとりの仕事の実態に目を向ける事に繋がり、生産性向上の手段として有効であると考えています。
生産性という時に問題となるのは特に管理部門です。そこで、本社の20部門余りの各部長に、部員一人ひとりの過去の残業データを事務局が提示し、各人の今後の残業計画を立ててもらうことにしました。その後提出された残業計画について細かくチェックをし、事務局が各部長のところに出向いて、どうしたら残業を削減できるかを話し合いました。例えば、ある部長は、「アメリカと欧州など世界各地と業務連絡をしなくてはいけない人は、朝も夜も働かなくてはならない」と言います。一方、別のある部署では、タイムゾーンが近い国ごとにまとめて担当を再配分し、時差出勤制度を活用することで残業にしない工夫を行っているようなケースもあり、これらを全社で共有するなどを行いました。

永守会長の教えに近かったSLII®

前述の通り、分科会テーマにもマネジメント力強化が挙げており、生産性向上にはマネジメント力の強化が不可欠との認識が共有されていましたが、加え、当社は急成長してきた事もあり中途入社のマネジメントも多く、全員が一度、部下の管理にフォーカスするようなマネジメント教育を受けるべきではないかとの議論になりました。また、日本電産はグローバル化が進んでおり、日本人比率は8%程度ですが、その事からも、このマネジメント研修はグローバルで通用するものが望ましいと考えました。

永守会長からも、生産性における最大の課題は英語力とマネジメント力だと指摘があり、特にマネジメント力については、我々マネジメント層は「マネジャーは、部下が残業している理由をわかっているのか?ちゃんと部下を見ているのか?」と繰り返し指導を受けておりました。なお、永守会長は、管理職の部下マネジメントにおいて次の3つが重要だとされています。

1.マイクロマネジメント(「一人ひとりをきちんと見る」という意味)
2.ハンズ・オン(「一緒にやる」という意味)
3.任せて任せず

これらの3つは言葉としては理解できても、どう実践すればいいのか悩ましいのですが、ブランチャードのSLII®は、この永守会長の教えに非常に近いのではないか、また、実践しやすく、かつグローバルに通用する研修であるということで採択するに至りました。

中国でも活きたSLII®

実は私は前職の金融機関に在籍していた時に、米国でSLII®研修を受けたことがありました。その研修に付いては、翌年の2003年に中国に赴任し初めて40名もの部下を持った際に効果を発揮しました。赴任後さっそくSLII®で学んだことを実践してみたところ、マネジメントも上手くいき業績も向上するという体験をしています。そして、帰国後、営業本部のマネジメントに対してもSLII®研修を受講するプログラムを組みました。
ただし、それほどSLII®の効果を知っている私ですが、日本電産でSLII®の導入を言い始めたのは実は私ではありません。ドイツのある子会社から、「SLII®という良い研修がある」との推薦があり、そこから話は進みました。

当社では、2018年の1月から3月にかけて、部下をもつマネジメント層180名がSLII®を受講しました。受講者アンケートでは、100%近い人が「とても有益」または「有益」と答えるなど、好評価となっています。開発系の理系の人からも、「SLII®のフレームワークはわかりやすい」と高い評価が寄せられました。また、180名のうち178名が「部下にも受講させたい」と答えており、今後の受講対象者の範囲拡大を検討しています。また、確実に職場で実践してもらうべく既受講者へのフォローアップや、人事制度への組み入れなども企画しているところで定着に向けた取組みを行うと同時にマネジメントの共通言語としての活用を加速させたいと考えています。