
AIは答えを出す。では、組織は誰が導くのか
AIは業務を速くしますが、組織の方向までは示せません。変化が激しい今、現場が求めているのは答えよりも「導き方」です。本記事では、ブランチャード社のスコット・ブランチャード氏が語る、AI時代のリーダーシップの視点をご紹介します。
AIは、これまでにないスピードで進化しています。文章を書き、分析し、予測し、ほんの数年前までは考えられなかった規模で業務を自動化できるようになりました。
一方で、多くの組織がようやく気づき始めている現実があります。それは、AIはリーダーシップの代わりにはならないということです。むしろ、AIが高度化するほど、人のリーダーシップはこれまで以上に重要になっています。
AIは答えを生み出すことはできますが、進むべき方向を決めることはできません。データを処理することはできても、信頼関係を築くことはできません。業務を効率化することはできても、人が「より良い仕事をしよう」と思える状態をつくることはできないのです。こうした役割は、今もこれからも、人にしか担えない領域です。
現在、各業界で起きているのは、「人が置き換えられている」ということではありません。仕事の中身そのものが変わり、役割が進化し、求められる水準が高まっています。そして、このような変化は自然に整うものではなく、意図的なリードが不可欠になります。
変化が速いほど、人は情報よりも「方向性」を求めます。
不安や迷いが生まれる中で、何を大切にし、どこに向かうのかを言葉にする役割は、現場を支える人事・育成部門にとっても重要性を増しています。実際、AI導入のスピードと、それを適切に導くリーダーや組織の準備状況との間には、大きなギャップが生まれています。
従業員は、「自分の仕事はどう変わるのか」「自分の価値はどうなるのか」といった、非常に切実な問いを抱えています。その不確実性を放置しないことが、組織の信頼とパフォーマンスを左右します。
AI時代のリーダーシップは、「すべての答えを持つこと」ではありません。成功が生まれる環境を整え、考えるための土台をつくることです。管理よりも文脈を示し、 知識量よりも問いの質が問われるようになっています。
多くの現場から明らかになっているのは、成果はプレッシャーから生まれるのではないという点です。人が「理解できている」「支えられている」「自信を持てている」と感じるとき、パフォーマンスは自然に高まります。この環境で成果を上げているリーダーには、共通する3つの特徴があります。
第1:人間的な要素を中心に据えていること
AIによる効率化が不安や距離感を生む場面では、共感や対話、目的の共有が不可欠になります。
第2:テクノロジー導入だけでなく、人の能力を育てていること
AIの価値は、それを使う人の判断力や自信によって決まります。
第3:責任ある使い方を自ら示していること
AIは人の判断を補うものであり、置き換えるものではありません。
今、組織に求められているのは、AIを導入することそのものではなく、人と組織を支えるリーダーシップを高めることです。AIは仕事を速く進める助けにはなりますが、より良く協働できるよう導けるのは、優れたリーダーだけだからです。
「人間ならではの強み」こそが、最も重要な資産なのかもしれません。
※本記事は、2026年4月6日付 San Diego Business Journal に掲載された記事を、再掲載許可のもとでご紹介しています。
※Scott Blanchard氏の記事、原文はこちら
このように見ていくと、AI時代に求められているリーダーシップは、「常に正解を示すこと」や「強く管理すること」ではありません。重要なのは、今何が起きているのかを整理し、相手の状況を理解したうえで、次の一歩を踏み出せる関わり方を選ぶことです。
変化が激しい今、画一的なマネジメントは機能しにくくなっています。 そこで注目されるのが、一人ひとりが置かれている「状況」や「タスク」に応じて、関わり方を変化させるリーダーシップです。経験やスキル、自信の度合いは人によって、またタスクや局面によって変化します。その違いを見極め、今必要な支援や指示を行うことが、安心感と成長につながります。
SLII®は、こうした状況やタスクの成熟度に着目し、リーダーがその時々に取るべき行動を体系化したリーダーシップフレームです。状況を捉え、最も効果的な関わり方を判断し、自立と成果につなげていく。それは、AIがどれほど進化しても、人にしか担えない役割です。
定期開催中の公開講座では、SLIIの考え方を基礎から学び、具体的な場面を通して「今、この状況で求められる関わり方」を考え身に付けていきます。AI時代においても変わらない、人の成長を支えるリーダーシップを、実践につなげたい方にご参加いただきたい講座です。
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