ケン・ブランチャード博士 著書“Great Leaders Grow: Becoming a Leader for Life”について語る

ケン・ブランチャード博士の新刊“Great Leaders Grow: Becoming a Leader for Life”が出版されました。

米Forbes誌 とのインタビューで「リーダーの成長を止めてしまう原因は何だとお考えですか」との質問にケン・ブランチャード博士は次のように答えています。

「一番の原因は、人間のエゴでしょう。自分が何でもわかっていると考えるようになったリーダーに、それ以上の成長は望めません。リーダーにとって成長し続けることは、ダイバーにとっての酸素と同じです。学び、向上していく姿勢がなければ、有能さという点で、そのリーダーは死んでしまっているのです。」

Q:マネジメント分野での長年にわたるキャリアの中で直面した最大の困難とは? また、どのように乗り越えられたのでしょうか。

ブランチャード博士:
「70年代の終わりに、妻とともに会社を起こした時です。
私たちはビジネスに関して全くの無知でした。幸運だったのは、5人の若手経営者が手助けを申し出てくれたんです。

本の中にも書きましたが、困難を乗り越える方法とは、自分から進んでフィードバックをもらい、助言を求めることです。
現在、私たちの会社は300人の従業員、国外にもオフィスがあり、
パートナーは30カ国にも及びます。もしあの時、率直に他者から学び、アドバイスを求めようとしなければ、今はなかったと思います。」

Q:若いリーダーが成長するための秘訣を3つあげて頂けますか?

ブランチャード博士:
「まず、第一に、知ることです。自分の強みと弱いところを知る。
一緒に働く人達についても同様です。業界研究を怠らず、リーダー
シップに関しても、本を読み、絶えず勉強をすることが必要です。
第二に、人に手を差し伸べること。進んでメンターとなり、自分が学んだことを相手に教える。リーダーシップとは、あなたのためではない。他の人の成長への投資なのです。
第三に、自分の世界を広げることです。現実を幅広く理解するために、職場以外で新たな経験の場を求める。会社内では、思い切って自分の部署の外に出て、会社全体を考える。ワーキンググループ、資金調達チーム、行事企画委員会など、リーダーシップを発揮する機会を探す。実践から学ぶに勝るものはありません。」

Q:マネージャーとリーダーとをどのように区別されますか。マネージャーでありリーダーであることは可能でしょうか?

ブランチャード博士:
「マネージャーとリーダーとを区別しようとは思いません。区別しようとすると、マネージャーはいつも脇役です。ウォレン・ベニスはこう言っています。リーダーは正しいことを行い、マネージャーは正しくことを行う、と。
私は、正しいことを行うのも、正しくことを行うのも、リーダーシップだと考えます。
リーダーシップには二つの主要な側面があると思います。
まず、一つめはビジョン・方向性で、これはサーバント・リーダーシップのリーダーシップの部分です。
サーバントというと、走り回って囚人の世話をやく刑務所の看守をイメージされる人がいるかもしれませんが、そうではありません。
階層型組織のピラミッドをさかさまにし、部下のために働く、部下がビジョンを実現できるよう、あらゆるサポートを惜しまない。
それが、サーバント・リーダーシップのサーバントなのです。
私が考えるリーダーシップとは、ビジョン・方向性を定める、そして実行する、つまり、伝統的なリーダーの役割とマネージャーの役割の両方を兼ね備えるということなのです。」

ブランチャード博士:
「伝統的なリーダーの役割とマネージャーの役割の両方を行えるか、ですか?

ビジョンを語るのが上手でも、実行が伴わないリーダーの場合、実行力のある人を自分の周りに集め、物事を先に進める。
逆に実行力に優れたリーダーは、誰かにビジョンを語ってもらうのです。優れたリーダーを目指すのであれば、両方の役割を行うべきです。

Q:リーダーシップ能力を徐々に向上させて、優れたリーダーと
なった方、何名かお名前をあげていただけますか?

ブランチャード博士:
「頭に浮かんだのは、WD-40社の社長兼CEOであるギャリー・リッジとサウスウエスト航空の前社長のコリーン・バレットの2人です。
この2人とは、一緒に本も出しています。

ギャリーは、サンディエゴ大学で教鞭をとっていた時の学生でした。
当時の私は問題教師で、講義の初日に期末試験の試験問題を学生に配布して、こう言ったのです。『問題だけでなく答えも教える。だから、みんなAをとれるよ』。実際、全員『A』でした。
人生で肝心なのは『A』を獲得することであり、標準的な分布曲線に
なるかどうかではない。ギャリーは私の話に共感し、こう思ったのです。『企業でも同じではないか』。
彼は、WD-40社の企業風土を変え、企業哲学『私の答案を採点する
のではなく、私がAをもらえるよう手助けする』の実行に踏み出したのです。

2010年、WD-40社は創業以来、最高の業績を上げることができました。同時に行った従業員に対数する満足度調査では、98%から回答を得、国籍が60カ国にものぼるという従業員の圧倒的多数が『満足』と回答しています。

『WD-40社は、私の尊厳を重んじ、敬意を払ってくれている』という
問いに、98.7%が『そのとおり』と答えています。ギャリーは、すごいですね。」

ブランチャード博士:
「サウスウエスト航空の元社長のコリーン・バレットですが、社長になる前のキャリアは、20年余、ハーバート・ケルハー(サウスウエスト航空の共同創立者の一人)の秘書でした。

ケルハーは、サウスウエスト航空のビジョンと目指すべき方向性は明確であり、『ジャック・ウエルチ』タイプのリーダーによって、会社がそれまでと違った方向に進むことを望んでいませんでした。

サーバント・リーダーシップを理解し、チアリーダーのように応援し皆を目標に導くリーダー。コリーンはうってつけの人物でしたね。
彼女のリーダーとしての成長ぶりには目を見張るものがあります。
あまりに感銘を受けたので一緒に本も書きました(「Lead with LUV:
A Different Way to Create Real Success」)。

18年の社長としての在任期間中、コリーンは航空業界においてもリーダーシップを発揮し、女性として先駆者といえるでしょう。」