人事評価をやめるべき?!~話題のノーレイティングに関する誤解とSLII®

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日本企業はどうすべきか

パフォーマンスマネジメントは往々にして従業員に評判が悪い。従業員意識調査などを行うと、「自分は正当に評価されているか」という質問項目のスコアは低くなるのが常である。そこで、その事態を是正すべく人事部は評価制度の改良を重ねる。その結果、制度はどんどん複雑になっていき、パフォーマンスマネジメントは時間がかかり面倒なものとなっていき、かえって本質が見えなくなってしまう。ノーレイティングを導入した企業は、恐らくパフォーマンスマネジメントをとことん突き詰めた結果、「いっそ評価を止めてしまったら」とリセットするに至ったのではないかと思う。

一方のグーグルやフェイスブックといった企業は、新しいが故に、最初から今の時代に即したパフォーマンスマネジメント制度を設計することができたのではないかと想像する。

また、ノーレイティングという制度自体が問題を解決するのではない。欧米では、ノーレイティングについて賛否両論あり、CEBに至っては、次のようなデータを報告している。
ノーレイティングを導入した企業において:
・上司と部下の話し合いの質が14%低下
・トップパフォーマーの報酬に対する満足度が8%低下
・従業員エンゲージメントが6%低下
・業績が10%低下
出所:https://goo.gl/E6xyu6

ノーレイティング下では、管理職の裁量が大幅に増加するので、優れた管理職がいればうまくいくが、そうでなければ逆効果であることを心得ておいたほうがよい。そして、パフォーマンスマネジメントの仕組みを今の時代に合うように改正したり、あるいは運用面で工夫したりすれば、先述の「ノーレイティングの4つの狙い」を達成することは十分できる。

ただし、20年間以上に渡り、数百社の日本企業と同じくらいの社数の欧米企業と関わってきた筆者が感じる日本企業の決定的な問題は、パフォーマンスマネジメント研修が不足あるいは欠落していることだ。制度そのものは日本企業もよく設計できている。しかし、制度についての説明会くらいは開催するものの、時間をかけて研修する日本企業はあまり見られない。記事の冒頭に述べたように、本来は最も必要な研修であるはずなのに、である。管理職、そしてできれば社員全員が、制度の趣旨や狙いについて議論することで腹落ちし、評価や面談の練習をしてスキルを上げるなどしなければ、うまく運用できるわけがない。

評価しようがしまいが、大切なことは一つ

評価をしようがしまいが、ノーレイティングにせよパフォーマンスマネジメントにせよ、うまく機能させるためには、「上司と部下のコミュニケーションの量と質の向上」が鍵となる。パフォーマンスマネジメントのための期初や期末に行う面談では、上司が一方的ではなく対話形式で、質問を投げかけたりして、部下の気づきとやる気を引き出すといった「コミュニケーションの質」が求められる。そして、期末に面談があるからといって、日常的な上司と部下の「コミュニケーションの量」を減らしてよいことにはならない。
ノーレイティング下でも、上司と部下はコミュニケーションを頻繁にとることが必要だし、その質も問われることは変わらない。
先述のCEBの調査結果で、ノーレイティング導入企業で従業員エンゲージメントが低下したのも、上司の対話力や説明力が不足しているからと報告されている。
そこで、上司と部下のコミュニケーションの重要性をハイライトするために、ノーレイティング導入企業では、話し合いのことを「カンバセーション(conversation=会話)」とわざわざ片仮名で呼んでいるところが多い。ギャップでは「タッチベース」、アドビシステムズでは「チェックイン」、GEでは「タッチポイント」といった具合に、各社がネーミングにはこだわっている。「面談」というと堅苦しい感じがするし、「会話」というと雑談のようだし、ということで、呼び名で意識すべきことを喚起しているといえよう。

そして、繰り返し述べているように、従来のパフォーマンスマネジメント下においても、日ごろから上司が部下と質の高い話し合いを行っていれば、ノーレイティングで企図していることの多くは実現できる。

ブランチャードのSLII®だが、このプログラムの狙いは正に「上司と部下のコミュニケーションの量と質を向上させること」にある。プログラムで受講者は、上司と部下との対等な話し合いがなぜ大切なのかを叩き込まれる。目標設定をするとき、あるいは目標達成の途中経過において、部下のスキルが高いとき、低いとき、部下のモチベーションが高いとき、低いとき等、きめ細やかに話し合いの方法を学べる。ブランチャードのお取引先にノーレイティング企業が増えていることは偶然ではなかろうが、本来のパフォーマンスマネジメントをもっと機能させたい企業にも是非お薦めしたい。

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