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時事情報

『1分間エンパワーメント』と星野リゾートのリーダーシップ最前線

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星野リゾート代表の星野佳路氏は、日経ビジネスのインタビュー*で「星野リゾートではケン・ブランチャード氏の理論に忠実にマネジメントをしています」と述べられています。そして、昨年に発刊されたケン・ブランチャード氏共著『新刊1分間エンパワーメント』の前書きでは、「今の星野リゾートは、この本がなければ存在しなかった。私の経営者人生で最も影響を受けたのが本書だ」と記されています。
星野リゾートでは具体的に、どのようにケン・ブランチャード氏の教えを実践しているのでしょうか?星野リゾートでオペレーション統括を務める渡部賢様に講演をしていただきました。(2018年5月25日)以下がお話の概要です。
*日経ビジネス2018年2月26日号経営者インタビュー記事

星野リゾートが一番大切にしているもの

星野リゾートは、「星のや」、「界」、「リゾナーレ」、「OMO」の4つのブランドを手掛ける施設運営に特化した企業である。新興ベンチャー企業だと思っている人が少なくないが、実は104年の歴史をもつ老舗である。

経営の特徴として、売上至上主義ではなく、ビジョン設定型であり、現在のビジョンとは「HospitalityとInnovator-世界の旅行者が待つホスピタリティ」。この20年近く、取扱高、施設数共に急成長していて、現在は国内外に37の施設がある。業界の中で、これほどの急展開を成し遂げた企業は他にない。
星野リゾートが一番大切にしているのは「組織」である。それも、「一部の経営陣の能力に依存する組織」ではなく、「仕組み・文化・価値観を保持する組織」だ。だからこそ、急成長できたし、急成長してもビジョンや価値観が薄れることなく、むしろ一層浸透してきていると感じる。

上司に不満なら、自分が上司になれ

星野リゾートはフラットな組織を志向している。各施設には、トップに総支配人がいて、その下にユニット・ディレクター、その下にプレイヤーがいる。この3層しかないので、情報の流れが非常に速い。
そして、この3層を上下関係とは捉えていない。そもそも総支配人とユニット・ディレクターは、年功序列はおろか任命制でもなく、手上げ制である。やりたい人が自ら立候補し、全社員による投票があり、投票結果を加味して決定されるのである。もし自分のユニット・ディレクターに不満があり、自分のほうがわかっている、うまくできる、と思うのなら、立候補せよということになる。

経営情報は常にオープン

職責やポジションに関係なく議論できる組織文化を重視している。そのためにも、経営情報は全員にオープンにしていて、毎月の経営会議は誰でも出入り自由であり、誰でも発言・質問・発表することが許されている。業績や、離職率、スタッフの意識調査結果までも公開され議論されている場に誰でも参加できるのだから、自分が当社に転職したときは本当に驚いた。
情報格差があると、上層部は「スタッフには狭い範囲のことしか見えていないから」という理由でスタッフの意見を取り合わなくなる。したがって、層に関わらず、情報を共有することがフラットな組織を維持するのに必要だ。
また、情報を得れば得るほど、視野が広がり、自分の得手不得手も見えてきて、もっと学びたいという気持ちが沸いてくるものである。それをサポートするための学びの場として約150の講座が用意されている。その受講も、もちろん手上げ式である。我が社では、「大人な自由な会社」を目指していて、何事も、強制はしないが責任を持つことを重視しているのである。

部下に異動希望を出させる

ユニット・ディレクターや総支配人といった管理職になるだけが成長の機会ではない。違う仕事をすることも成長につながる。したがって、毎年、異動希望調査を行っている。人事部が一方的に従業員に異動を命じるようなことはない。そして、総支配人は、メンバー全員が異動希望を出すことを目標にするように言われているので、囲い込むことはできない。
できるだけ本人の希望を叶えるようにするが、できないときは、その理由をきちんと説明することになっている。

外に出てわかった星野リゾートの凄さ

星野リゾートでは、ビジョン(目指す姿)は皆で合意し、それに向かうことにコミットするが、その進め方は自由でよい。ただし、「やりたい人がやる」「コミュニケーションは双方向」「経営情報はオープンに」などといった価値観のガイドラインから外れてはならない。
実は、以前、自分はヘッドハンターの誘いにのり、星野リゾートを辞めたことがある。ところが、転職先では、経営情報が共有されず、ビジョンも示されず、自分は何に向かってどう頑張ればよいのかが全くわからなかった。星野リゾートでは、文化として浸透しきっていたので、当たり前のように感じていたことが、他の企業ではそうではないことを実感し、半年で星野リゾートに復職した。

青森屋の総支配人として

星野リゾートに出戻りしてから、青森屋という施設の総支配人に立候補した。総支配人として自分がやったことは、青森屋の将来像を決めたことくらいである。将来像とは、「青森発の日本文化の継承者になる」ということ。そして、この地でした深みの出せない青森の魅力を磨き上げ、「圧倒的なおもてなし」と「唯一無二の世界観」を感じられる「青森文化テーマパーク」を作っていこうと呼びかけた。
なお、青森屋には、自分が赴任する前から「コンセプト」なるものがあった。それは、現場のスタッフから成るコンセプト委員会が決めたもので、「のれそれ青森」というコンセプトである。「のれそれ」とは「徹底的に」という意味の青森弁である。このコンセプトは、支配人が決めたのではないので、支配人が入れ替わってもぶれることなく持続され、磨き上げられていき、やがて他には真似できないレベルになっていく。また、スタッフたちが、お客様にそのコンセプトを説明するときは、実に楽しそうで一生懸命になる。そうした言葉はお客様の心に響く。こうして、従業員満足度と顧客満足度が相乗効果で上がっていく。
自分が掲げたビジョンは、このコンセプトをもとにした今の青森屋が目指すべき未来像という位置づけである。
コンセプトとビジョンができれば、それを実現していくために「魅力会議」を定期的に開催した。その会議の参加者はもちろん立候補制であり、青森の魅力をお客様に感じてもらうための企画を練るのが目的である。その会議の運用ルールは、①アイデアを否定しない ②コンセプトから逸脱しない ③コスト・労力を無視して発想する、の3つ。
ビジョンを示し、最低限のルールを設定すると、あとは現場のスタッフからどんどんアイデアが出てきた。みちのく祭りや、のれそれ食堂、新しい客室のデザイン、しがっこ金魚まつり、りんご×ほたてまつり、雪ん子×ねぶた灯篭まつり、たんげ花見まつりなど、自分では思いつかないようなアイデアが生まれ実現した。

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数値目標は一切掲げず

自分が総支配人になったとき、売上目標やら顧客満足度目標やら人件費など、数値目標は一切掲げなかった。掲げたのは将来像だけである。実は、転職する前は、「なんだかんだ言っても数字だ」と思っていた。が、転職の経験がきっかけとなり、自分自身のマインドが大きく変わり、ビジョンや価値観が何よりも大切だと気付いたのである。
そして、結果的には、売上、利益、顧客満足度はすべて右肩上がりで増加した。

書籍『1分間エンパワーメント」は、エンパワーメントには次の3つの鍵が必要としている。
第1の鍵:正確な情報を全社員と共有する
第2の鍵:境界線を明確にして自律的な働き方を促す
第3の鍵:階層組織をセルフマネジメント・チームで置き換える

今日の話で、星野リゾートが、これら3つの鍵をどう実践しているか、おわかりいただけたなら嬉しく思う。

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