【事例紹介】アストラゼネカ様の社内講師奮闘によるラーニングカルチャー醸成

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世界大手の製薬企業として革新的な医薬品を届けるアストラゼネカの日本法人であるアストラゼネカ株式会社では、2025年に向けて「イノベーションで患者さんの人生を変えるNo.1パイオニア企業になる」というヴィジョンを掲げています。そのヴィジョン実現のためにも同社の人事本部は「組織全体にライフロング・ラーニングカルチャーを醸成と浸透」という人材戦略を展開しています。「ライフロング・ラーニングカルチャー」とは、従業員が新しいスキルや技能を自発的に学び、成長し続ける文化のことであり、変化の激しい環境において企業の持続的な成長を支えるために不可欠な社内風土だと考えられています。また、従業員の成長を管理職が効果的に支援する「コーチングカルチャー」の醸成も同時に取り組んでいます。

人事本部長自らがメンバーにプログラムを実施

こうしたラーニングの文化醸成に向けて研修プログラムを模索していた執行役員人事本部長の奥村由香氏は、かねてからSLII®研修プログラムで交流のあったブランチャード・ジャパンのプログラムに適したものがないか検討を始めました。そして、ブランチャード・ジャパン主催の「セルフ・リーダーシップ」プログラムと「コーチング・エッセンシャルズ」プログラムの公開講座に参加。これらがアストラゼネカの目指すラーニングカルチャーづくりに有用であることを確信した奥村氏は、自らが講師となり、人事本部のメンバーにこの2つのプログラムを実施しました。

これらプログラムの有用性を実感したメンバーの賛同も得て、全部門で、非管理職の従業員を対象にした「セルフ・リーダーシップ」プログラムと管理職層を対象にした「コーチング・エッセンシャルズ」プログラムを提供することを決定しました。

営業部門と非営業部門では異なる提供方式を採用

「セルフ・リーダーシップ」プログラムの実施にあたって、日本法人社員が約3,400名を超えるアストラゼネカ株式会社の中でも大きな割合を占める営業部門では、従業員が日本全国に配置されていることもあり、「C&M方式」(*注1)という新しい研修提供方式を取り入れることにしました。一方で、管理部門や研究開発部門などで構成される非営業部門においては、従来の集合研修の提供方式が採用されました。

注1:C&MはCollaborated & Moderatedの略で、ケン・ブランチャード社が開発した研修提供方式。数百人単位の規模でオンライン受講することができる。詳しくはこちらの記事をご参照ください。

2022年導入当時、アストラゼネカ株式会社の疾患領域別に分かれた事業本部のうち、まず循環器・腎・代謝(通称CVRM)疾患領域事業本部の営業部で先行実施することとなり、所属する営業部員が数百名単位でC&M方式の「セルフ・リーダーシップ」プログラムを受講しました。講師は、ブランチャード・ジャパンのトレーナーが務めました。

一方、非営業部門に対しては、従来の形式で研修を提供することになったのですが、ここで講師として活躍したのが、自ら手を挙げたアストラゼネカ株式会社の従業員です。会社の同僚が講師となることで、受講者にとって、より身近なテーマだと感じてもらえるはずだと考えられたからです。また、「ライフロング・ラーニング」および「コーチング」カルチャー醸成のために、社内認定講師は効果を発揮するという狙いもありました。社内認定講師には、人事部門以外からも募りました。これは同社にとって、初の試みでした。

「セルフ・リーダーシップ」では29名の社内講師が、そして「コーチング・エッセンシャルズ」では14名の社内講師が、起用されました。こうして、「セルフ・リーダーシップ」の全60回(2023年時点)ならびに「コーチング・エッセンシャルズ」の全23回(2023年時点)の研修を2年かけて実施していくという、壮大な取組みが始まったのです。

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評判を聞き、各部署から前倒しを要望する声が

他事業本部に先行して、「セルフ・リーダーシップ」プログラムを実施(2022年11月終了)した循環器・腎・代謝事業本部の営業統括部長の小嶋貴裕氏は、このプログラムの効果について次のように語っています。

「今年、我が事業本部は極めて高いパフォーマンスを実現できたのですが、『セルフ・リーダーシップ』プログラムが大きく貢献したことに間違いありません。先般、特にパフォーマンスが高かった課とミーティングを行ったのですが、そこでも、このプログラムのことが話題になっていました。彼らのミーティングでは、誰かが『これは無理』と言うと、『それは思い込みの制約(*注2)ではないか』とチーム員同士でマインドセットをするシーンが多くなったそうです。チーム内に共通言語ができていることを実感しました。「セルフ・リーダーシップ」プログラムは今後も是非継続していきたいと考えています。」

注2:「セルフ・リーダーシップ」プログラムでは、セルフリーダーに必要な3つのマインドセットと3つのスキルセットを学ぶが、「思い込みの制約」はそのマインドセットのうちのひとつ。詳しくはこちらの記事をご参照ください。

このようなプログラムの評判を耳にした他の事業本部からは、「うちの本部でも早く実施したい!」という要望が寄せられており、アストラゼネカ株式会社の研修事務局では取組みの加速化を検討中です。

独自の社内講師認定制度を構築

先述のとおり、非営業部門では、C&M方式ではなく、社内認定講師による従来方式の研修を提供することになりましたが、ブランチャードのガイドラインに従って、アストラゼネカ株式会社の社内講師認定制度が設けられました。

希望者は、まず、ブランチャード・ジャパンの講師によるプログラムを受講者として体験します。次に、同社から提供される講師用教材一式を読み込み自習します。そして、ブランチャード講師による「セルフ・リーダーシップ」と「コーチング・エッセンシャルズ」の社内講師養成講座(ティーチバックセッション)を受講しました。

このような訓練を経て社内認定講師となった従業員からは、「思ったより大変でしたが、多くの学びがありました」との声が聞かれました。

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社内認定講師の奮闘が認められ表彰!

こうして準備が整い、2022年8月から両プログラムの非営業部門への本格展開が始まりました。

これまでの経験について社内講師や受講者の声をご紹介しましょう。

~「セルフ・リーダーシップ」の社内認定講師のコメント~

  • 自分がまず受講してみて、もっと早くに、この内容を知っておけばよかったと思いました。そのパワフルな内容を皆さんと共有できることをとてもうれしく思います
  • 社員全員がこの考え方を身に付けることができたら、会社は2025年に向けたヴィジョンに向けてさらに前進できると思います。

~「コーチング・エッセンシャルズ」の社内認定講師のコメント~

  • 受講者同士のディスカッションの機会も多く設けられ、受講者同士が学び合っている姿を見ると嬉しくなります。
  • 社内講師の認定を得るのも実際に研修で講師を務めるのも本当に大変だが、コーチング文化の浸透や社員の自立性の加速化に貢献していることに一同が誇りをもって取り組んでいます。

~受講者のコメント~

  • 社内の講師だったので、それほど緊張せずに安心して受けることができました。
  • これまで受けてきた研修の中で、一番参加しやすく、楽しい研修でした。
  • とても実用的な内容なので、具体的なアクションにつなげられそうです。

こうした社内認定講師の奮闘と活躍が社内で高く評価され、社内認定講師を含む研修チームの上記の取り組みは、2022年末に、アストラゼネカ・グループの戦略および優先事項に沿った取り組みに対して贈られる社内アワードにおいて最も優れた成果の一つとして表彰されました。。

社内トレーナーの皆様、おめでとうございます!

アストラゼネカ株式会社では、2023年以降も、これらの研修プログラムが続きます。こうして、「ライフロング・ラーニング」と「コーチング」が社内のカルチャーとして着実に根を下ろすことが期待されます。