
【事例紹介】Amazonのリーダーシップ育成戦略「SLII®の導入と定着支援」
Amazon Japan合同会社 オペレーション人事部 HRビジネスパートナーの伊藤 裕一様に、「AmazonにおけるSLII®の展開」と題してお話を伺いました。世界で実績のあるリーダーシップモデル「SLII®」がどのように社内で活用されているのか、具体的な導入事例を交えながら共有いただいた内容には、多くの共感や学びがあり、大変意義深い時間となりました。
アマゾンの成長を支える行動指針:Leadership Principles(LP)
アマゾンの急成長を支えているのは、Leadership Principles(LP)と呼ばれる行動指針です。数が非常に多いですが、最初は「Customer Obsession(顧客志向)」から始まり、最後は「Deliver Results(結果を出す)」で締めくくられます。この間に、アマゾンが大切にしている価値観が網羅されています。アマゾンでは、部下を持つかどうか、大きなチームを率いるかどうかに関係なく、全員がリーダーであるという考え方が浸透しています。この文化が、SLIIの導入において非常に重要な土台となっています。
このLPは単なるスローガンではなく、日々の業務や会話の中に深く根付いています。例えば、メンバーの自立性を育てることや、自発的な努力を促すことは、「Ownershipを発揮することですね」と自然に言い換えられます。また、信頼関係の構築は「Earn Trust」と表現され、多国籍なメンバー間でも共通言語として機能しています。
「SLII®」のグローバル展開と体制構築
2023年、アマゾンは全世界のOperation担当社員に向けてSLIIの導入を決定しました。Blanchard社との契約のもと、グローバルの研修担当チームが中心となり、各組織から選ばれたChampionと呼ばれる社内講師が展開を支えています。
Operationのイメージとしては、倉庫で働く人々が中心ですが、HRやFinanceなどのバックオフィス機能も含まれます。グローバルの研修担当チームは、これらOperation全体を対象にした教育研修チームであり、SLII導入の中核を担っています。対象となる職層の方には必須受講として案内されますが、受講日は本人が選択する形式で、柔軟性を持たせています。
アマゾンカルチャーと「SLII®」の親和性
SLIIの導入において、アマゾンのカルチャーとの親和性の高さは重要なポイントです。LPが日常会話に頻繁に登場するアマゾンでは、SLIIの概念が自然に受け入れられやすく、実践にもつながりやすい環境が整っています。
例えば、「1on1」や「Ownership」「Earn Trust」といった言葉は、SLIIの考え方と直結しており、メンバーの成長支援や信頼関係の構築において、SLIIのフレームワークが有効に機能します。多国籍なメンバーがいる中でも、LPとSLIIは共通言語として活用でき、組織全体の一体感を高める要素となっています。一方で、SLII導入時には注意すべき点もあります。アマゾンのベンチャー気質においては、スピード感や柔軟性が求められる場面が多く、SLIIの理論的な枠組みが硬直的に受け取られないよう、社内講師がLPと紐づけて説明することが重要です。
定着支援への取り組み
SLII導入後の課題として、定着支援が挙げられます。研修を受けて終わり、という傾向がある中で、Operationでは初回展開の段階ですが、一部のリーダーは人事評価会議で「これって開発レベルでいうと何?」といった質疑をするようになっています。
定期的に、SLIIワークシートを使って学習内容を思い出す取り組みもあり、1on1での活用も予定されています。社内ニュースレターでもSLIIワークシートの活用がリマインドされています。 このような定着支援の取り組みは、SLIIの理論を実践に落とし込むための重要なステップであり、アマゾンのカルチャーと融合させることで、より効果的なリーダーシップ開発が可能になります。
「セルフ・リーダーシップ」の展開とマネジメント課題への対応
SLIIの導入は、マネージャー向けだけでなく、セルフ・リーダーシップの展開にもつながっています。社員のキャリア自律度や成熟度に課題がある中で、新入社員が多い組織では、「自分の成長にOwnershipを持ってほしい」というメッセージが重要です。 また、評価の高い社員でも、解決すべき課題を持っていれば、具体的な対応策を提供するツールとしてSLIIを活用してもらうといった展開も進められています。SLIIは、こうしたマネジメント課題に対して、具体的な対応策を提供するツールとして活用されています。
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Amazon Japan合同会社 オペレーション人事部
HRビジネスパートナー 伊藤 裕一氏
プロフィール: 現職ではHRBP/Grocery Business担当として、現場に密着しながら、働く人々の環境改善や能力開発に重点をおいて活動。メンタルヘルス対応、将来の組織設計・組織開発など、幅広い領域を担うジェネラリスト。
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