
【事例紹介】三井住友ファイナンス&リースが考える“形だけ”の1on1にいかに終止符を打つか?
「1on1をやれと言われても、部下が沈黙してしまい会話が続かない」
「コーチングが大事だと言われ問いかけを繰り返すが、かえってメンバーが疲弊している」 今、多くの現場マネジャーが、こうした「形だけの1on1」に頭を抱えています。世に溢れるリーダーシップ論を実践しようとすればするほど、部下との距離が開いていく。そんな皮肉な状況が至る所で起きています。
先日実施しましたSLII®3.0認定トレーナーの皆さまを対象にしたイベント「トレーナーズ・ネットワーキング2026」で、三井住友ファイナンス&リース株式会社 MTF推進部 副部長 明石 武久 様に、泥臭くも本質的な事例を共有いただきました。
様々な組織で凄まじい現場経験を積んでこられた明石氏が辿り着いたのは、世に氾濫する「バズりワード」に惑わされることなく、目の前の部下の現実に寄り添うリーダーシップの姿でした。いかにして1on1に「魂」を吹き込み、組織を動かすのか。その処方箋をお届けします。
「バズり」に振り回される現場
1on1をはじめ、コーチング、心理的安全性、キャリア自立、ジョブ型など、私たちの周りには、定義が曖昧なまま「バズりワード」として消費される言葉が溢れています。明石氏は、こうした言葉の独り歩きが現場に深刻な状況を生んでいると指摘します。
沈黙の1on1:
上司が「話を聞こう」と身構えるほど、部下は何を話せばいいか分からず沈黙する。
逆効果のコーチング:
右も左も分からないメンバーに「どう思う?」と問いかけを繰り返した結果、信頼関係が崩れてしまう。 1on1をすることが目的化し、相手の状況を無視した画一的な手法を押し付ける。この「バズり」への盲従こそが、現場を疲弊させる正体なのです。
SLII®が解き放つ「状況対応」の力:コーチング万能論を超えて
明石氏が数ある理論の中でSLII®に強く惹かれたのは、世に蔓延する「コーチング万能論」の限界を突破できると考えたからです。
SLII®の核心は、部下の状況(開発レベル)に合わせ、リーダーが「指示的行動」と「支援的行動」を適切に組み合わせ、使い分けることにあります。「とにかく気づかせよう」とするコーチング的なアプローチは、相手の状況によって有効な場合もあれば、そうでない場合もあります。有効でない場合、コーチングは相手に苦痛を与え続けることにもなりかねません。
明石氏は、SLII®モデルの現場での活用を促進するために、具体的なツールを取り入れています。それが、個別面談ワークシートです。このシートでは、1on1が始まる前に、メンバー自身が1on1で取り扱いたいトピック、自身の状況、リーダーにお願いしたいことを記載しておきます。
入社5年目の女性社員との1on1では、このシートを活用した非常に興味深いやり取りがありました。SLII®の理論を知っている彼女は、自ら「私はこのタスクに関してはD3(自律しつつあるが、自信に波がある状態)なので、S3(支援的行動:話を聞く、自主的な問題解決を促す、認めて励ます、等)で接してください」と、SLII®の言語を使って話し始めました。
1on1を進めると、彼女が新しい挑戦に対して不安を抱えつつも、具体的な進め方のイメージが持てていない部分があることに気づいたそうです。そこで明石氏は、彼女が望む「傾聴(S3)」だけでなく、あえて「指示(S2の要素)」を混ぜて具体的なアドバイスを伝えました。リアルタイムで部下のニーズを診断し続けることで、形だけの1on1を本物の対話に変えたのです。
マズローの欲求段階説との組み合わせ
また、明石氏は「マズローの欲求5段階説」を用い、部下の現在地を分析しています。チームへの帰属意識(所属欲求)が不足していたり、過重労働で心身が疲弊(安全・生理的欲求)していたりする部下に対し、いきなり「君のキャリア(自己実現)」を語らせるのは逆効果でしかありません。部下が今、ピラミッドのどの段階にいるのか。その土台を見極めない限り、どんなに素晴らしい言葉も響きません。
先程のお話に戻ると、明石氏に対して、女性社員は確かな手応えを感じた表情でこうコメントしたそうです。
「私には良き1on1でした」
この「生きた言葉」こそが、マネジメントが正しく機能した証ではないでしょうか。
まとめ:あなたの1on1に「魂」を吹き込むために
組織変革においては、最初から全員を動かそうとする必要はありません。まずは4%の熱狂的な仲間を作る、という信念のもと、ボトムアップで本当に役立つものを広めていく。この泥臭い積み重ねが、大きな組織を動かす原動力となります。
マネジメントに魔法の杖はありません。「1on1」や「コーチング」というバズりワードを免罪符にするのをやめ、目の前の一人ひとりが「今、この瞬間に何を必要としているか」に愚直に向き合うこと。それこそが、リーダーシップです。SLII®モデルは、その答えをはっきりと示してくれます。
今日あなたが行う1on1は、部下の『今この瞬間のニーズ』に応えていますか?
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三井住友ファイナンス&リース株式会社
MTF推進部 副部長 明石 武久 様
先物取引の営業職としてキャリアをスタート。その後、外食企業で店舗運営、マーケティング、商品開発、経営企画、全国統括などの業務を経験。人事コンサルや金融企業では、制度策定支援、管理者研修、人材・組織開発に携わる。現在はMTF推進部副部長として顧客企業の人材育成や組織開発支援のほかワークショップデザイン等に従事
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