ノルマ達成のために営業マネジャーが持つべきスキルとは
ノルマ。
この言葉を聞くとうんざりするかもしれませんが、営業の現場では常に付き合わなくてはならないものですよね。そんな営業現場において、マネジャーはどのようなスキルをどうやって身につければよいのでしょうか。
以下のケン・ブランチャード社の記事をぜひご覧ください。
原文はこちら
「私はいつだってノルマをクリアしてきました。やがて、営業マネジャーに昇格しました。でも、マネジャーの役割を引き受けたのは、私にとって最悪の選択だったかもしれません。」
これは、よく聞かれる営業マネジャーの嘆きですが、状況の背景を理解すれば、驚くには値しません。
典型的な状況は次のような感じでしょう。
ある優秀な営業担当者は、常に高い営業成績を達成していた結果、昇進を手にしました。上層部は、その人は営業としてトップになれたのだから、優れたマネジャーになれるはずと勘違いしていたからです。しかし、営業することとリードすることには、あまり共通点はありません。
このふたつの役割はかけ離れたもので、求められるスキルも異なります。ですから、その人はマネジャーという新しい役割に対して準備ができてはいませんでした。
その結果、どうなったかは容易に想像できます。チームの業績は低迷し、退職する部下も出ました。かつてのスタープレーヤーは、苦悩するマネジャーとなりました。そして、会社にとって頼みの綱であった収益源も低下の方向に転換してしまいました。
この話は、フィクションではありません。世界中の企業で数え切れないほど繰り返されている事態です。そして、そのことによって、企業とその従業員たちは多大な被害を被っています。
営業マネジャーがもがく理由
たいていの営業マネジャーは初めてのその職務に苦労するものです。実のところ、ほとんどの新任マネジャーが苦労しているのです。その原因をお教えしましょう。マネジャーの58%は「昇進時にマネジメントの研修を受けなかった」と言っているのです。
ですから、50%のマネジャーが部下から「マネジメントが上手くない」と評価されているのは、驚きではありません*1 。もう一つの原因は、新任の営業マネジャーは、部下が成功できるように指導する代わりに、自分が最も得意とすること(つまり営業)をやり続ける傾向があることです。
このように苦戦するマネジャーは、チームの足を引っ張ります。ギャラップ社の調査によると、事業の種類に関わらず、従業員エンゲージメント調査結果のスコアの少なくとも70%がマネジャーに起因していました*2。
苦戦する営業マネジャーは、さらに大きな代償をもたらします。チームが失敗すると その波及効果は組織の収益にまで及びます。これは誇張ではありません。ハーバード・ビジネス・レビュー誌に掲載されたある論文では、リードが上手くできない営業マネジャーのコストが定量化されていました。優れた営業マネジャーの年間平均ノルマ達成率が105%であるのに対し、低業績の営業マネジャーの達成率は54%でしかなかったことが報告されています。*3 また、同じ論文によると、営業担当者が自分の上司を「優秀」または「平均以上」と評価した場合、そのうちの69%がノルマを超過しているとのことです。優秀な営業マネジャーと優秀な営業担当者の間に相関関係があることは明らかです。つまり、営業マネジャーは、チームのパフォーマンスを上げるか、脱線させるかのレバーを握っているということです。
営業マネジャーが身につけるべき必須スキル
ケン・ブランチャード社の専門家らは、営業マネジャーがなぜ苦戦するのか、そして成功するためには何が必要なのかを長年にわたり研究してきました。必要なものは、ひと言でいえばリーダーシップスキルの向上です。部下を成長させるために営業マネジャーが身につけるべき具体的なリーダーシップスキルについて説明しましょう。
コーチング:ハーバード・ビジネス・レビュー誌に掲載された「You Can't Be a Great Manager If You're Not a Good Coach」(優れたコーチでなければ、優れたマネジャーにはなれない)というタイトルの記事において、モニーク・ヴァルクール氏は次のように述べています。
「有能なマネジャーと平均的なマネジャーを分ける、最も重要なマネジメント能力はコーチングである」*4。にもかかわらず、現場の営業マネジャーの73%は、コーチングに関するトレーニングをほとんど、あるいはまったく受けていません*5。
コーチングは、効果的な営業マネジャーの決定的なスキルです。コーチングを通じて、営業担当者が説得力のあるプレゼンテーションを行えるようにしたり、自信のない人に自信をつけさせたり、挫折したときに精神的な支えになったり、チームが必要な支援を受けられるようにしたりなど、多くのことを行うことができます。部下のコーチングができていないことが、営業マネジャーが苦戦する主たる原因のひとつです。一方、営業マネジャーにコーチングの方法を教えれば、 そのチームのパフォーマンスは劇的に向上します。
状況に応じてリードする:コーチングができることは必須ですが、さらに、状況に応じてどのようなコーチングを行うべきかを知ることは、とても重要なことです。
部下が「指示」を必要とするのはどのような場合でしょうか。もしくは、必要なのは「支援」かもしれないし、あるいは両方が必要とされているのかもしれません。例えば、ある営業担当者はプレゼンには長けているが、見込み客の見極めが苦手かもしれません。または、商品知識はピカイチなのに、クロージングでつまずく人もあります。このようなダイナミックな環境では、画一的なアプローチは通用しません。効果的な営業マネジャーはそのことをよく理解しており、状況に応じた指導をすることができます。
建設的な会話をする:営業マネジャーと営業担当者の間の会話を有意義にできるかは、彼らのコミュニケーション能力にかかっています。問題は、私たちの多くが建設的な会話をするためのスキルを持ち合わせていないことです。しかし、正直な会話をするために必要な2つの要素である「率直さ」と「好奇心」を示す方法を知れば、有意義な話し合いができるようになります。
生産的な会話をするには、フィードバックを与えるスキルも必要ですが、フィードバック提供は、多くの営業マネジャーにとってやりたくない仕事のひとつです。しかしながら、フィードバックを提供することは、営業マネジャーが営業担当者を支援する上で最善の方法のひとつなのです。
信頼を築く:信頼は、あらゆる人間関係の基盤です。しかし、上司と部下の間の信頼関係の低さは衝撃的です。なんと、約58%の人が上司よりも見知らぬ人のほうがまだ信頼できると言うのです。さらに悲観したくなるデータがあります。64%の従業員が、ロボットの方が上司より信頼できると答えているのです*6。
部下に信頼されていないマネジャーは良きリーダーにはなれません。部下が優秀な人材に育つこともありません。それどころか、部下はマネジャーを陥れようとするかもしれません。職場は苦悩と闘争の場となってしまいます。
逆に、優れたマネジャーは、部下と信頼関係を築き、それが損なわれたときには修復する方法を知っています。
人々が変化に対応できるよう手助けする:営業組織では、激しい変化が起こります。よくある例としては、新製品や新サービスの発売、新しいCRMシステムの導入、販売プロセスの変更、組織再編成といった変化です。そうした変化に対して人々がどう反応するかは予測可能なのですが、ほとんどのマネジャーは、そのことを知らないため、同じ間違いを繰り返しまうことになります。
その結果、営業担当者たちは、変化を成功させるために必要な新しい考え方や行動を習得することができません。あるデータは「組織改革は70%の確率で失敗する」という暗い結果を示しています。これでは、組織の収益向上など到底かないません。
営業マネジャーをリーダーに変える
営業マネジャーにリードする方法を教えるとどうなると思いますか?ケン・ブランチャード社では40年間に渡ってそれを実践してきたので、リーダーシップの肝を教えるとどんな変化が起きるのか経験として知っています。ここでは、もがく営業マネジャーに効果的に対処した弊社のクライアント2社の事例を、ご紹介しましょう。
ひとつ目の事例は、米国最大級のインダストリアル製品のサプライヤーであるGlobal Industrial社です。
営業マネジャーらは、コーチングを通じて部下が新しい営業プロセスを実行できるように支援する必要がありました。
そこで、新しい営業プロセスを学ぶ研修を実施する約3か月前に、営業マネジャーは、ブランチャードのSLII® を受講しました。SLII®では、リーダーが部下との良い関係を構築し、部下の状況に合わせて指導法を変えるスキルを学ぶことができます。また、部下との目標設定の面談や、1 on 1の会話などで使える様々なツールが提供され、営業マネジャーは職場で実際に活用することができました。
Global Industrial社の事業開発担当バイス・プレジデントのマイク・ハスキンズ氏は、自社の取り組みを振り返って、次のようにコメントしています。
「この取り組みは、あらゆるレベルにおいて優先事項として扱われました。果敢な研修のスケジューリングに始まり、研修効果の定着のための様々な施策から、施設のあちこちにあるモニターに投影されるSLII®モデル図に至るまで、すっかり我が社のビジネスプロセスの一部となりました。」
もうひとつの事例は、武田薬品工業の米国拠点です。
その営業組織ではSLII®は既に取り入れていました。あるとき、新しい営業手法が導入され、営業マネジャーらがそのやり方を部下に効果的に教えるには、更なるツールや支援が必要であることが判明しました。そこで、リーダーシップ開発チームは、ケン・ブランチャード社と共に、ダッシュボードのようなスプレッドシートを開発し、営業マネジャーに活用してもらいました。これによって、部下ごとの新しい営業プロセスの習得度合い(「開発レベル」)や行動変容を一目瞭然で把握できるようになりました。
武田薬品のトレーニング担当マネジャーのティム・ファンク氏は、次のように述べています。「SLII®はどのような営業モデルにも応用がきき、営業スタッフのパフォーマンスを向上させ、組織内にモデルをしっかりと根付かせることの助けになります。製品のROI(投資収益性)を高め、収益を向上させ、社員が活躍できるようになります。」
ブランチャード・ジャパンでは、営業マネジャーが身につけるべきスキルに関連したプログラムを用意しております。どうぞお問合せください。
・コーチングする:コーチング・エッセンシャルズ
・状況に対応してリードする:SLII®
・建設的に会話する:カンバセーショナル・キャパシティ(2023年から発売予定)
・信頼を築く:信頼関係構築
・人々が変化に対応できるよう手助けする:変化に向けて人々を導く
参照先:
*1. 10 Shocking Workplace Stats You Need To Know
*2. Why Great Managers Are So Rare
*3. The 7 Attributes of the Most Effective Sales Leaders
*4. You Can’t Be a Great Manager If You’re Not a Good Coach
*5. 5 Hallmarks of High-Impact Sales Management
*6. 10 Shocking Workplace Stats You Need To Know
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