変化に対応できるマインドセットとスキルセットを身に付ける
ChatGPTなど新技術の台頭、紛争や戦争の勃発、激しさを増す自然災害など、変化の目まぐるしさと熾烈さは年々と増しているように感じられます。ビジネスリーダーは、こうした変化にどう対応し、組織の変革をどう推進していけばよいのでしょうか。
ブランチャード社の変革論の専門家であるジャド・ホークストラが、変化に対応するためのマインドセットとスキルセットについて解説します。
原文はこちら:
Building the Mindset and Skill Set for Change (blanchard.com)
今日のビジネス環境において、変化は新たな様相を呈しています。多くの組織が、ビジネス成長を促進することを目的とした、大規模で戦略的な変革プロジェクトに取り組んでいることは従来と変わりません。しかし、変革推進において生じている新しいトレンドもあります。それは、組織の基盤にアジリティ(俊敏さ)とチェンジレディネス(変化対応力)を構築する必要性です。
それは何を意味するのかといえば、リーダーがすべての答えを知る前に飛び込む姿勢が必要ということです。
かつては、リーダーは変化を "解明するもの"として捉えていました。そして、できるだけ100パーセントの結果を得ることを目指していました。今、物事は急速に変化しているため、ターゲットはどんどんと動いていってしまいます。したがって、方向性を正しく定め、何がうまくいっていて、何がうまくいっていないのかを素早く学び、随所で調整を加えなければなりません。そのためには、個々人は、実験・調整・改良という考え方(マインドセット)を持つ必要があります。
つまり、私たちは、曖昧さに慣れ、完璧とは言えない変革の取り組みを前進させる覚悟を持たなければなりません。何かを理解した思った途端にまた世の中が変わってしまうので、学び直し、素早く軌道修正することがありうることを認識しなければなりません。
ブランチャード社のSLII®モデルの用語で述べると、一人ひとりが、「熱狂的な初心者」から、「幻滅した学習者」、そして「有能だが慎重な貢献者」に移り、そして最終的には「自立した達成者」に達し、そこで変化が起こり、また最初の段階(「熱狂的な初心者」)に戻るということになります。
学習から習得までの過程を可能な限り迅速に行き来できる能力こそ、今日の組織が求めているものなのです。
未知の世界での活動を苦にしないこと
キャロル・ドウェックが、著書『マインドセット「やればできる!」の研究』の中で、この考えを最もよく説明していると思います。彼女は読者にグロースマインドセットを身につけるよう勧めています。誰もが発展途上にあり、周りで起きている変化もまた常に現在進行形であるという考えに基づいています。そして、「うまくいくか、いかないか」という問いを、「どの部分がうまくいき、どの部分がうまくいかず、その過程で何を学び、改善できるか」という問いに置き換えるべきとしています。
リーダーとして、私たちは軌道修正することに慣れる必要があります。最初はジグザグに進むかもしれませんが、やがてスタート時よりもブレ幅が減っていくのだと考えましょう。物事は不完全であることを認識し、その不完全さから学び、道筋を調整することが大事です。
不完全な解決策から始めるのを厭わないこと
リーダーは不完全な解決策から始めることを厭わなければなりません。 最近、組織改革について、ある同僚と会話したときのことを共有しましょう。
同僚は私に、「アウディを手に入れるのを待つのか、それともスケートボードから始めてもいいのか」と尋ねました。
さらにこう言いました。「アウディを手に入れるのを待っていたら、ショールームからそれを出す準備に時間がかかる。スケートボードでもよいというのであれば、今すぐに移動するのが可能だ。スピードは出ないし、アウディに乗っているときと同じようには走れないかもしれないけれど、1年後、2年後のアウディを待つよりは、今スケートボードに乗ったほうがよいのではないか」。
私たちの多くが直面している選択を表現する素晴らしい比喩だと思ったものです。
他者を巻き込むこと
変革を成功させるもう一つの側面は、少人数によるトップダウン・アプローチから脱却し、「高関与モデル」を採択することです。
変革を成功させるには、その変革によって影響を受けるすべての人が、高いレベルで関与する必要があるからです。
そして、リーダーはチームメンバーに、「何がうまくいっていると思う?」や「今。何が障害になっている?」などと問いかけることです。そうすることで、リーダー自身の個人的な経験外から物事を学べるだけでなく、変化を前進させるための合意形成も始まります。人々は、自分の考えや経験を提供すると同時に、リーダー側の視点や根拠をいち早く知ることができます。
「戦いを計画する者は、めったに計画と戦わない」という格言は真実です。人々が問題を目の当たりにし、解決策に参画する機会を持てば、変革を支持する可能性が高まります。しかし、リーダーが他の人をプロセスに巻き込むことなく解決策を打ち出すと、人々は 「いったいなぜこんな変更をするのだ?」と疑問に思ってしまうでしょう。
ブランチャード社の「変革に向けて人々を導く」研修プログラムの中で使われている「懸念を表面化させるための5段階モデル」をご紹介しましょう。これは、スーザン・ラックス=ホースリーの研究成果を反映したもので、それによると、人が変化を求められたときに、段階的にどんな懸念を抱くかは予想可能です。これらの懸念は抵抗と見なすべきではなく、むしろ、人々が変化について何を考え、何を感じているかを反映した疑問なのであり、応えるべきものです。以下がその予測可能な懸念の5段階モデルです。
- 「情報の懸念」の段階では、人々は変革に関する情報を得るために質問をする。
- 「個人の懸念」の段階では、人々はその変革が自分にとってどのように作用し、個人的にどのような影響を与えるかを知る必要がある。
- 「実施の懸念」を持つ人は、誰が計画に関与しているのか、その変革はパイロット施行されるのか、 情報やリソースをどのように探せばよいのか、組織のインフラがその変更を下支えするのか等を理解したいと考えている。
- 「結果の懸念」は、変更が本稼働した後に生じる。この段階にいる人たちは、その変革が事態を改善しているという証拠を求め、他の人たちの成功事例から学ぶ機会を必要とする。
- 「改良の懸念」がある場合、人は結果と継続的改善の両方に焦点を当てている。そして、改良プロセスを任されることを望み、今後の変革をリードしたいと考える。
探求心、信頼、共感は、変化を経験するときに人々が経験する懸念の段階に対処するリーダーにとって、最も重要なものです。「高関与型」の変革を通じて、リーダーが人々の懸念を表面化させ、それに対処することで、懸念は最小限に抑えられるか、解決されます。さもなければ、懸念は障害となり、変革プロセスを停滞させることになります。
探求心があれば、リーダーが人々の懸念を明らかにしようとするでしょう。人々が経験していることに共感できなければ、変革を通じて人々を導くのは難しくなるでしょう。彼らはリーダーを信頼しないからです。
リーダーは効果的に質問し、人々の答えに耳を傾けなければなりません。また、優先順位をつけることも必要です。こうしたスキルは学ぶことができます。これらのスキルは一般的に人を率いるときにも必要ですが、変革を率いるときにはさらに重要になります。
どのような組織においても、多くの人は変革に参加する場に招かれたことがないでしょう。彼らは観客席にいます。そして、共に変化を起こすのではなく、変化を押し付けられるということを経験してきています。一方、ブランチャード社は、人々が変革のゲームに積極的に参加することを望みます。人々に変革のゲームのフィールドの中で、貢献し、価値やアイデアを提供してもらいましょう。
ブランチャード流の変革手法では、変革の影響を受ける人々をより積極的に変革推進チームに参画させることをリーダーに求めます。この方法こそが、変革によって望ましい結果を達成する可能性を大幅に向上させる成功の秘訣であることが実証されているのです。
今日の時代に変革を効果的に推進できるリーダーを育てるには、ブランチャードの「変化に向けて人々を導く」研修プログラムの導入をご検討ください。
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