SLII®研修を通じて、面談の量と質の向上を実現
先日「トレーナーズ・ネットワーキング」の会において、株式会社TKC執行役員・人事教育部部長の田中康義様に、TKCにおけるSLII®とセルフ・リーダーシップの社内展開についてお話しいただきました。この会は、ブランチャードの認定講師となり、社内トレーナーとしてご活躍されているクライアント企業の皆様を対象として定期的に開催されているもので、研修プログラムの社内展開のベストプラクティスを共有したり、研修効果向上のためのアイデアの交換を行ったりしています。以下に、田中様にお話し頂いた概要をご紹介します。
1966年に創業された株式会社TKCは、会計事務所と地方公共団体の2つの分野に専門特化した情報サービスを展開しています。全国にある約3万の会計事務所のうちの3分の1超、そして全国にある1741の自治体のうち6割以上がTKCのユーザーであり、知る人ぞ知る存在となっています。
TKCは「自利利他」を企業理念に掲げ、自社サービスを通じて、①中小企業の黒字化支援、②脱税のない世界、③住民福祉の向上支援を追求しています。
4分の1の社員が面談をしていなかった
TKCでは、「従業員は企業の持続的成長の要である」という認識の下、2018年に人事教育部門が新設され、それまで主要事業部門の営業本部責任者を務めていた田中康義氏が責任者の命を受けました。
田中氏は、まず社内の現状を把握するために、従業員満足度調査結果を精査しました。すると、上司と部下との面談の実施率が部署によってばらつきが大きく、また、全社で4分の1の社員が面談を受けていないことが判明しました。目標管理制度を導入しているTKCでは、本来、半年毎の目標設定と目標達成評価の面談に加え、目標達成を支援するための面談が行われることが求められていたのですが、それが実行されていないという現実があったのです。「当社の主要業務であるシステム開発にせよ、コンサルティング営業にせよ、メンバーは上司や周囲の人と話し合いをすることで成果があげられるはずなのに、上司とすら十分に面談が行われていないとは」と田中氏は強い危機感を覚えました。
では何故このような事態に陥っていたのでしょうか。従業員へのヒアリングなどを通じて、ふたつの主要な要因が浮上しました。そのひとつは、「上司が面談の価値を認識していない」ということでした。面談を実施していない上司の多くが「忙しくてその時間がない」と言っていたのですが、「面談の価値や重要性を理解している人ならいくら忙しくてもやるはずだ」と田中氏は断言します。
もうひとつの要因は「上司は面談をしているつもりだが、部下は面談してもらっているという認識がない」という認識ギャップでした。こうしたギャップが生じるのは、恐らく上司の面談のやり方に問題があり、面談の質の向上も課題であることが明らかになりました。
田中氏はSLII®が課題の解決策になりうると考えました。実は、田中氏は、偶然にも人事教育部門の責任者になる直前に、同僚から薦められてブランチャード・ジャパンのSLII®の公開講座に参加したことがあり、SLII®が上司と部下の話し合いの量と質を向上させることを主眼としたプログラムであることを実感していたのです。
フルパッケージでSLII®を展開し、効果を検証
田中氏は、課題提起、要因分析、そしてSLII®という解決策を社長に提示し、社長からは「まずは小さく始めて効果を検証せよ」という指示が出ました。そこで、2019年に特定の部門を選び、上司向けにSLII®、部下向けに「セルフ・リーダーシップ」プログラムの第1次パイロットを実施しました。
パイロット研修開催の前後には、受講者の部下にアンケート調査を行い、面談の量と質に変化が見られるかの検証を行いました。質問項目には、以下のようなものが含まれていました。
- 直近で直属上司と面談したのはいつですか?
- 直近で直属上司と面談した直後の気分は?(モチベーションは上がったか?)
- 今後、直属上司との面談を望みますか?
- 上司と部下の面談は目標達成のために効果があると思いますか?
すると、すべての項目において研修後に改善が見られたのです。
なお、SLII®の標準プログラムは2日間ですが、現場からは「もっと短くできないのか」といった声が寄せられました。しかし、田中氏は「短縮版にしてしまうと、研修効果がきちんと出せないことへの言い訳になりかねない。ここは妥協しないと決めた」と言います。そして、役員層も含めた全管理職に対して、例外なく2日版のSLII®を提供する覚悟を固めたのです。
営業責任者も講師担当
順調に滑り出したSLII®プログラムの導入でしたが、2020年にはコロナ禍のため中断を余儀なくされました。しかし、2021年に取組みを再開。第2次パイロットを経て、全社展開にこぎつけ、未受講だった320名の管理職がSLII®を、そして約1700名の非管理職社員が「セルフ・リーダーシップ」プログラムを受講しました。受講の動機付けのために、一連の取組みの「すべてはメンバーが目標達成できるようになるため」だということを繰り返し強調するようにしました。
SLII®では、ブランチャード・ジャパンから派遣されたプロの講師がメインの進行を担当し、TKCの社内認定講師はグループワークなどを担当しました。「セルフ・リーダーシップ」プログラムは、TKCの社内認定講師が持ち回りで担当しました。社内講師は、人事教育部門だけではなく、全国の事業所、事業部・部門・職種を横断して任命されました。講師の中には営業部門の責任者の方もいて、多忙を極め数字のプレッシャーも高い中にありながら「自分にとっても刺激とリフレッシュになるし、様々な部門の人とのネットワークが広がるメリットもある」と快く引き受けているそうです。
全社展開を経て、毎年実施されている従業員満足度調査結果から、面談の実施率が引き上がる傾向が確認されました。ただし、この間、在宅勤務制度が導入され、ウェブでの面談への抵抗感といった障害もあり、さらなる改善の余地もあるため、今後はSLII®のフォローアップ研修が計画されています。「研修効果の定着の鍵は、社内認定講師。社内で一目置かれている実力者が講師として語ると説得力が増す」と語る田中氏は、社員の1%(約25名)を社内認定講師に育てることを今後の目標としています。
TKCの挑戦から得られた7つの教訓
最後に田中氏はこの一連の取組みから得られた7つの教訓を共有してくださいました。
教訓:
- すべては「(あなた)メンバーのニーズを満たすため」をブラさない
- 「成果が出るのは3年後」と覚悟する
- 手を抜かず、省略せず、例外なくやってみる(省略・妥協による後悔しない)
- 社内に理解者を増やす(「識っている=教えることができるレベル」の社員)
- 行動変容は成果を生み、成果は必ず定着を生む
- 定着の取り組みに終わりはない(楽しむ)
- 次の世代を信じる(昨日の自分より明日の自分は優秀)
そして、最も重要なことはトップ(社長)の理解と応援をいただくこと。
大変貴重な取組み事例を共有いただいた株式会社TKCの田中様には、深く感謝申し上げます。
御社でも、SLII®とセルフ・リーダーシップを導入して、上司と部下の面談の量と質を向上させませんか?
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