
エンパワーメント組織のつくり方
前回のブログでは、エンパワーメントとは単なる権限移譲ではなく、「社員が持っているパワー(知識、経験、意欲)を解き放ち、それを組織の課題解決や成果を達成するために発揮できる状態をつくること」とお伝えしました。今回は、そんなエンパワーメントされた組織をつくるための方法についてより具体的にお話しします。
「すべての社員と情報を共有する」ために必要なこと
エンパワーメント組織では、すべての社員が正しい意思決定をタイムリーに行える環境が必要です。そのためには、正確な情報を社員が自由にアクセスできる状態を整えることが重要です。
例えば、以下のような施策が考えられます。
・管理職とスタッフの間で情報格差をなくす。
・リーダーが社内ブログを定期的に発信する。
・すべての会議に誰でも出席できるようにする。
あるサービス企業では、これまで経営陣しか閲覧できなかった「お客様の声」を、ほぼリアルタイムで全社員に共有する仕組みを導入しました。これにより、現場の社員が積極的にお客様の意見を現場のサービス改善に活かすようになりました。
情報をオープンにすることで、現場の社員は「信頼されている」と感じ、スピーディーな意思決定が可能になります。ただし、ここで誤解してほしくないのは、「すべての情報をすべての社員に共有する」ことではなく、「現場で正しい意思決定をタイムリーに行うための情報を特定し、それにアクセスしやすくする」ことがポイントです。やみくもに情報を開示しても現場が混乱するだけです。現場の社員が意思決定するために必要な情報は何か?を考えることがとても大事です。
皆さんの組織では、現場の社員が迅速に意思決定を行うために必要な情報は特定できていますか?またそれは誰もがいつでもアクセスできる状態でしょうか?
境界線を設けると社員が自立できる
必要な情報さえが手に入れば、自分で考え、行動できると思うかもしれません。しかし、どの方向に向かい、どの範囲で自分で判断してよいのかが明確でなければ、人はなかなか行動できません。そのため、エンパワーメント組織では「境界線」を設けることが重要になります。
この境界線には、以下の要素が含まれます。
事業の目的(パーパス):組織の存在意義を明確にする
未来のイメージ:目指すべき理想の姿を具体的に描く
価値観:日々の意思決定や行動の基準を示す
目標:今期、どこまでを目指すのかを定める
役割の明確化:各ポジションが担うべき責任をはっきりさせる
組織の構造とシステム:ビジョン*の実現に向けて必要な仕組みを持つ(*ビジョン=パーパス+未来のイメージ+価値観)
これらを明確にすることで、社員一人ひとりが安心して「自分で考え、行動できる」ようになります。組織のビジョンをはじめとする境界線を社員が自分の言葉で語れるようになると、組織全体の一体感が強まり、主体的な行動が促されます。
皆さんの組織では、組織の目的や価値観を明確にし、社員が自らの言葉で語れる状態になっているでしょうか?
次回のブログでは、セルフマネジメントチームの育成についてお話しします。

安田 太郎
ブランチャード・ジャパン
マスタートレーナー/シニア・コンサルタント/PFC(上海) 董事長
大手小売業で採用・教育・海外人事を担当後、中国で人事コンサルタントとして活躍。現在はブランチャード・ジャパンのマスタートレーナー、シニア・コンサルタント及びPFC(上海)の董事長として、リーダーシップ開発プログラムを提供。

SLII®導入から始まったー組織文化の変革と人材育成の実践事例
SLII®を学校組織にどう根づかせたか(尾道学園様事例紹介)学校法人尾道学園は、尾道市にある私立中学・高校で、昭和32年に設立され、まもなく創立70周年を迎える

HRのための「セルフリーダーシップ・チェックリスト」進呈中!
若手社員の「主体性の芽」を引き出すセルフ・リーダーシップ 「最近の若手社員は指示待ちばかりで・・」「どう関われば自発的に動いてくるのか分からない」 HRのみなさ

まず自分をリードする:なぜセルフ・リーダーシップがすべての始まりなのか
成長するのに誰かの許可がいるのでしょうか?誰かの許可を待ってはいませんか?多くの人が、「指示に従う」「期待に応える」「求められたことをこなす」といった力を育てな